--初めに--
最低限度の補足。うらとは福井県あたりの方言で「自分自身」を指す。ただ全て方言で表現すると分かりにくい文章が更にわかりにくくなるため正式な方言ではなく雪月が作った方言っぽい表現となります。
作品裏01:初めのころが懐かしい。追い越すなんて言ってたっけ。今はもはや近づく事すらかなわないのがわかる。
ただ、つめて、つめて、つめて、突き詰めていって、たどり着いた先がただ見えただけだった。そう、見えただけだった。
これは機会というのかそれとも奇怪というのか。
作品裏02:うらはうらへとおもてへと、うらとおもてを感じてと。ゆめとうらはおなじかや?ゆめはうらへとうつつへと。
聞こえしものはおおけれど、触(ふ)ることかなわぬゆめうつつ。うらのうらはうつつかや?夢みしうらの歌語り。
作品裏03:あや珍しい、うらが見えるなんてね。言霊の意味に気付いたんね。最近は全然いないからそろそろ隠居しようかんと思ってたとこよ。
ま、分かってると思うけどお主は意味に気付いたんに過ぎん。うらを作ったのも人ならばうらを消すのも人じゃんけ。全ては人次第というとこよ。
作品裏04:いろいろ知りたいんじゃろうけどうらは本来何も教えぬ。自分自身で問うてみよ。
ふむ、人は希望が欲しかったから箱を開けなかったんじゃろ?全てを知るうらに何を求む。お主は希望を失いたいのか?それとも絶望を知りたいのか?古に無いものがどういうものかくらいはもうわかっておろ?
作品裏05:お主はうらが夢に見えるか。それでも構わん。ほとんどのものは夢で遇う。少しのものは霊感で遭う。お主のようなうらで逢うのは稀じゃ。
主のような逢い方であれば記憶に残す事は出来よう。じゃがすぐ見れなくなるものがほとんどじゃ。主は見続けることができるかの。
作品裏06:お主は一応考えた事があるようの。人類が全て滅んで新しい知的生命が生まれて、パソコンとやらが見つかったとして。それは凄い技術と分かっても中に今の全世界の情報が入ってるとは思わんよの。
仮に全て残そうとしても後のものは分からぬのよ。うらはそういうものじゃけね。
作品裏07:愚かな。うらを試そうと?ふむ、ま、意図はわかる。が、お主には厳しかろ。うらを見続ける事すら厳しやというのに。
ま、主が最後の一人になるやもしれぬ。少々つきおうてもよい。うらを見続けることができるのなら、お主自身をもっと見せてみよ。
作品裏08:のぅ主よ。それは本気で思っているのかや?この100年で一体何種の生命が絶滅したと思うておる?遺伝子と動画とやらで全て残せると?どこまで安易に考えておるのかや。せめてうらと話すつもりなら及第点程度は超えてみせ。
主は失ってからでは戻らないことを知っておろ?
作品裏09:ふむ、人は便利なものを求める。手軽なものを求める。そもそも悪用されることを考えていない。より安全なものを作ってもどうせ悪用する人がいないと便利で安いものを求める。
車が自動で運転するシステムのアップデートを悪用され事故を起こす。か。それで?
作品裏10:ふむ、今のまま進んでいけば地球は温暖化が進み台風は大きくなり竜巻のようになり被害は拡大していく。と。それで?
お主の話は何一つ解決に導いておらん。一体何が言いたいのかもわからん。危険性を問うだけで世が動くのなら既に変わっておろ?
作品裏11:ふむ。恵まれているものは恵まれていることに気付けぬ。失って初めて気付ける、か。ま、現在においては及第点くらいかの。
難しいだけで気付けぬわけではのぅ。気付きにくいだけで、気付くことはできる。気付かせる人か気付ける環境がないだけではのぅか?
作品裏12:お主の考えている通り同じ世界が延々に続くことは一見消失していないように見えて終焉なのよの。ある意味やり直すことすらできない最悪の終焉かもしれぬ。
同じことの繰り返しでない未来が続く道。到達できたものはうらにもおらぬ。その時は主らもうらの仲間入りじゃの。
作品裏13:ふむ、お主は全人類が滅亡しても宇宙は変わらず在る、と?ゆえに月にメッセージを残せば伝わるのではないか、と考えたわけか。うらなのに少々干渉しすぎたかもしれんの…。
まぁ、その考えに至っても月が何故同じ面を向いてるのかを考えない辺りはお主が及第点を超えれぬ理由じゃの。
作品裏14:少々お主の話は聞き飽きてきた。一つくらいは及第点を超えると思っておったのだがや。今回うらと話したものは全てお主を超えておった。これ以上朽ちてゆくものをあまり見たくはのぅ。
ただ唯一主を認めてもよいところは杞憂かもしれん。その想いもいつかはうらとなるじゃろうがの。
作品裏15:大体わかった。うらは世の終焉を知っている。が、うらはただ在るだけで何も教えてくれない。
私自身の答えの問いにうらは答えてくれたがその続きを聞くことは許されない。自分で全て見つけないといけない。
……。
そもそもこの記憶は現実に持っていけるのか?
作品裏16:いや、そんなことを考えても今は分からない。
今、私がするべきことは一体……?
何?
……。
答えをもらえない事を覚悟したうえで、私は問いかけた。
私の中に答えは……?
「うらの願いは一体……?」
うらは少し笑った後に歌を歌い始めた。
作品裏17:うらはうらへとおもてへと、うらとおもてを感じてと。ゆめとうらはおなじかや?ゆめはうらへとうつつへと。
聞こえしものはおおけれど、触(ふ)ることかなわぬゆめうつつ。うらのうらはうつつかや?夢みしうらの歌語り。
その顔は悲しくもあり、嬉しくもある顔だった。
作品裏18:ふむ。所詮お互い消えゆく運命同士ということかや。ふふ、笑わせてくれる。妙なところでは息があうようの。
お主の目的は消失が分かっておりながら僅かの可能性にかけたいわけかの。お主はもっとうらを見るべきかもの。うらにはもっといたからの。
作品裏19:機会があればまた逢うてもよい。次は必ず及第点は超えてみせ。次に会う時も世があったらいいの。お主もうらになってるかもしれんがの。
一人の力は弱い。皆と協力することは不可欠じゃ。それは簡単ではのうて、後の世に恨まれぬよう。
うらはうらであるべしゆえ。
--最後に--
普通の作品は自分なりには作れるようになってきたと思っているので、今回はあえてかなりひねった作品を作ってみました。逆にひねりすぎてプロット段階では説明が足りなくてわかりにくいかもしれません。テーマが大きすぎて、まだ自分にはちょっと早い気がしました。
普通の作品は自分なりには作れるようになってきたと思っているので、今回はあえてかなりひねった作品を作ってみました。逆にひねりすぎてプロット段階では説明が足りなくてわかりにくいかもしれません。テーマが大きすぎて、まだ自分にはちょっと早い気がしました。
「うら」には初めに書いた通り「自分自身」を指しますが「裏」という意味も含んでいます。また文章中で使っている「うら」にはそれ以外の意味も含まれています。その意味が分かる事で一度目に分からなかった歌語りは「おもて」は「裏の反意語」という意味で解釈すれば二度目にはなんとなく分かるように作られています。興味があればどうぞ。
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作品瞳01:戦争が起こり、ほぼ全てのものが無くなった。その世界には私以外に二人の人が居た。
一人は裕福で親が子を思い戦争が起こっても生きれるように可能な限りのものを残し親の想いで生き残った。
もう一人は私と同じ。ただ偶然生き残った人だった。
作品瞳02:残りの二人はどちらも異性だった。私の生きていた世界では二人とも選ぶのは常識ではなかった。だから私は選択した。
裕福な彼女はマナーもしっかりしており、生活できる空間すらある。もう一人は私より貧しい暮らしをして格好もひどいものだった。
--追記--
裕福な人は貧しい人に私を取られることを恐れたのか家に入れたがらなかった。その気持ちは理解できる。でもこういう時こそ協力したほうがいいんじゃないか…?しかし自分が大事にすると決めた相手の気持ちを優先することにした。
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作品瞳03:裕福な人と一緒にすることを決めた私は幸せな生活をしていた。子供も生まれ少しの希望が持てた。
そんな時残っていた爆弾が近くで爆発した。私は子供を失い、生活する場所も失った。
子供が退屈そうだから外に出てみようかという話になった。それが岐路だったのかもしれない。子供が走り回った先に残っていた爆弾があり爆発した。
住んでいた建物自体は残っている。でもどこかの配線が切れたのか全く機能しない。直すすべも知らない。私は子供を失い、生活する場所も失った。
子供が退屈そうだから外に出てみようかという話になった。それが岐路だったのかもしれない。子供が走り回った先に残っていた爆弾があり爆発した。
住んでいた建物自体は残っている。でもどこかの配線が切れたのか全く機能しない。直すすべも知らない。私は子供を失い、生活する場所も失った。
作品瞳04:裕福な人は辛い生活を今まで経験したことがなかった。子供を失ったこともあり、その辛さにだんだん耐えられなくなりストレスから私の眼を引っ掻いてしまった。
そして私の眼は光すら失った。
作品瞳05:私は裕福でなくなった彼女から離れることにした。しかし眼すら見えない。私はもう限界だった。
そんな時に貧しい人が現れ水をくれた。私は心から感謝した。ふと思う、ずっとどうやって生きていたのだろう。
--追記--
そしてわかる、貧しい人は泥をすするように生きていたのだ。
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--追記--
そしてわかる、貧しい人は泥をすするように生きていたのだ。
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作品瞳06:目が見えなくなったおかげで、貧しい人の格好は全然気にならなかった。
貧しい人は目が見えない事を分かってくれてつまずいたりしないように手を持ってくれた。
--追記--
爆発した時にできた傷が痛む。でも彼女の行為がそれを和らげてくれた。
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--追記--
爆発した時にできた傷が痛む。でも彼女の行為がそれを和らげてくれた。
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作品瞳07:幸せな暮らしをしていた時貧しい人の事を考えた事はほとんどなかった。
一緒にいる事で、昔から生きる事すら困る生活をしていてマナーなど学ぶ機会すらなかったことを知る。
作品瞳08:私は何故貧しい人を選ばなかったのか。何故もっと早く気付けなかったのか。
裕福な人が悪かったわけじゃない。ただあまりにも辛い生活をしたことがなく、ただ耐えられなかっただけだ。それも分かる。
作品瞳09:何故私はこの人生になってしまったのだろう。例え過去に戻っても今の記憶がなければ同じ選択をするだろう。
もし私の眼がずっと見えたら、見えるように戻ったら、貧しい人の今までの行為は霞んで見えるのだろうか。
作品瞳10:貧しい人は私の眼を治る事を望んだ。そしてほとんど病気になったことがないと言っていたのに熱をだし眠っていた。
神よ、私の眼は二度と見えなくていい。だから彼女を幸せに……してあげてください……。私の眼からは涙がこぼれた。
--追記--
その言葉はもはや声ですらなくただの泣き声の様なものだった。
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--追記--
その言葉はもはや声ですらなくただの泣き声の様なものだった。
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作品瞳11:眠りながら彼女は言った。
「私は……幸せだよ……」
私の心からの言葉が夢の中で彼女に伝わったのかは分からない。私は彼女に寄り添うように永遠の眠りについた。
それは戦争の後に起こった出来事だった。